レポートの修正・再提出について

レポートを作成する意義について

本実験の最終目的をプログラムの作成であると考えている人が多いようです.しかし,プログラムの作成は全体の一部であり,通過点にすぎません.

本実験では,

  • アルゴリズムとデータ構造を理解する (体得する)
  • 自分の作ったプログラムやそこで用いた方法論を,他者が理解できるように説明する
  • そのような説明や,何のために何を行ったのかという合目的的行動の説明を,レポートとしてまとめる

という事項を重要視しています. とくに「レポートを書く」という行為は,

  • 「卒業論文を執筆する」練習として重要ですし,
  • 技術者として会社で働く上では必要不可欠です.

「他人のものを書き写す」だけで,卒業論文や会社での報告書を完成させることはできません.必ず自力で成し遂げなければなりません.

プロスポーツの選手は,毎日練習し,その成果を発揮することで試合に勝利します.毎日の練習で上手にプレイできない選手が,試合で勝てるはずがありません.

これと同じことが技術文書の作成でもあてはまります.大学の学生実験レベルの内容ですらまともにレポートを書けない人間が,社会で通用する技術文書を作 れるはずがありません

私達は,学生のみなさんが少しでも高い知識やスキルを身につけられるよう,できる限りのサポートをしていきます.自分のスキルアップ・レベルアップのため の,すなわち自分自身のための訓練だと考えて,実験へ取り組みましょう.

レポートの再提出が持つ意味

本実験では,ほとんどの場合,レポートの再提出を指示されます.数回の再提出後や後半になると,1回で受理される報告書がいくつか出てくるくらいです.

まず大事なこととして,「再提出」が「ネガティブな評価」を意味するわけではありません.再提出の回数が増えるほど評価が下がる,ということはありません. つぎに,レポートの修正作業は,運悪く行なうことになった副次的なものではなく,主要で重要な経験です.むしろ,レポートの修正作業を経験するためにプロ グラム実験を行っていると言っても過言ではありません.

修正作業を面倒に思う気持ちはわかります.

一生懸命にプログラムを作り,手間ひまをかけてレポートを書いたわけですから,その努力を汲み取って欲しい,評価して欲しいという気持ちにもなるでしょう. それなのに「どこそこが悪いから再提出」と言われれば,良い気持ちはしないでしょう.

繰り返しになりますが, 「再提出」はそれまでの皆さんの活動,努力を否定しているのではありません.

むしろ逆です.せっかく頑張ったことなのにそれを客観的に,他者が理解できるように表現できていない部分があるので,そこをぜひ改善してください,という 要求です.「ミスがある」と責めているのではなく,「ここはこのように書いたほうがわかりやすい」と助言しているのです.

レポートの再提出における修正方法

  • 原則は作り直し (該当ページの差し替え)
    ただし,実際には大変な作業になることもあるため,修正液・修正テープの使用 あるいは 上から紙を貼る というかたちでの修正も認めている
  • ペンで塗りつぶしたり,取消線を引いたりするのは,原則として認められない
  • 赤ペンで書き足したり,最後のページに訂正内容を付け足したりするのは,原則として認められない

再提出によるペナルティは課しませんので,丁寧に訂正してください. それこそが向上への近道です.逆に テキトーな修正はレポートの評価を下げて しまいます.

レポートの作成と再提出で学んで欲しいこと

他人に何かを説明するのは意外に難しいものです.まして身振り手振りを使える口頭ではなく文章として伝えるとなると,説明はさらに難しくなります.

この難しさへ現実に対処しているのが,電化製品の取扱い説明書です.ちゃんとした製品 (企業) の説明書は,図や表も使って,必要な情報がなるべくわかりや すく,なるべく誤解の無いように伝わる文書になっています.

そのような文書を 自力で作るにはそれ相応の訓練が必要です. 実験内容・結果を教員へ伝えるという題材を通して,そのような 文書を作成する訓練 を行うことが,この実験の大きな目標になっています.


また,本実験では,他者による指摘へ冷静に対応することも学びましょう.

レポートとその作成者は異なります.力を入れて作成したレポートであればあるほど,レポートへの指摘を作成者自身への批難であるかのように受け取ってしま いがちですが,そんなことはありません.レポートはレポート,自分は自分です.

本実験を通して,この切り分けを身につけるようにしましょう.

レポートを修正し再提出するという行為が同じでも,その取り組みにおいて「なんか言われたことを反映させた」と思っている場合と,「より有効なノウハウを 身につけてそれを応用した」と考える場合では,効果に違いが出ます.逆にいえば,取り組み方を工夫することで,同じ行為の価値を高められるということです. 精神論のようで気持ち悪い気もしますが,稲元の知る範囲では無視できない事実です.